Otx遺伝子の構造とその標的遺伝子

Otxは脊椎動物や節足動物の頭部形成にかかわる遺伝子として注目を集めている形態形成遺伝子であるが、その直接の標的遺伝子の同定は我々のグループ以外は成功していない。Otxによる標的遺伝子の転写調節機構の研究に関しては、世界でも我々の独壇場である。

(1) ウニはOtx遺伝子の、転写開始点とスプライシングパターンを変えることにより、単一のOtx遺伝子から発生初期に発現するOtxEと、後期に発現するOtxLの2種類のOtxを合成している。

Otx遺伝子

(2) OtxLのエンハンサーはOtxL転写開始点の下流、OtxEプロモーターの上流にあり、主要エンハンサーエレメントはOtx結合サイトである。

(3) OtxEの強制発現により、OtxLの発現開始が早まる。このことは、OtxEがOtxLの転写調節にかかわることを示唆している。

(4) 我々はアリールスルファターゼ遺伝子(Ars)が、Otxの標的遺伝子である可能性を、リポーター融合遺伝子を用いたシスエレメント解析と、胚からの核抽出液を用いたゲルシフト分析により示し、in vivo トランスアクチベーション分析によりOtxが直接、Arsの発現を調節することを証明した。

Otx遺伝子

(5) また、Otxは単独で働くのではなく、共役因子と協調的に作用すること(Arsの場合はCAAT結合因子と共役)により転写調節をすること、共役因子が変わることにより、標的遺伝子の特異性が変わる可能性を指摘した。