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第 292 回 三崎談話会

下記の通り、第292回 三崎談話会を開催いたします。今回は、ダニの系統・分類学的研究を展開されている 島野智之さんにご講演頂きます。ご興味のあるかたは是非ご参加下さい。談話会・懇親会の申込は、三浦(miu_at_mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)または宇田川(世話人 udagawa_at_mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)まで。

日時:2019年4月17日(水)17時00分~

場所:東京大学大学院理学系研究科・附属臨海実験所・セミナー室

講演者:島野智之(法政大学・自然科学センター)

懇親会: 18時30分〜 会場未定 

島野智之(法政大学・自然科学センター)
「なぜダニ類は鋏角類の中で最も種数が多いのか?—鋏角類内部の系統関係—」

 約4億年前に地上に現れたダニ類は,昆虫が果たせなかった海への適応を成し遂げ,6500 mの深海から高山まで,極地から熱帯雨林まで,動物の身体からチーズの上まで,ありとあらゆる場所に生息している.世界で学名のついているダニ類は約55,000種であるが,比較的目につきやすいクモ類でも約45,000種であるため,鋏角類(約11万種)の中では現状,ダニ類の種数が最も多い.昆虫類の108万種には遠く及ばないが,ダニ類は体が小さいだけに,まだまだ新種が発見されると考えられており,その種数は将来的に50万種あるいは100万種に上るだろうと予想されている.本講演では,鋏角類の中で最も種数の多いダニ類が,今日までその多様性をどの様に維持してきたのかについて,高次分類群から個体群レベルまで幅広い視点から議論したい.節足動物門の高次分類群(亜門レベル)の系統に関しては,汎甲殻類(甲殻類+昆虫類)について,現在も多くの分類学者が研究を進めている.対して,鋏角類と多足類,2つの亜門内部の系統関係には,未だコンセンサスが得られている系統樹は存在しないため,これらの系統に関する筆者らの近年の取り組みをご紹介したい.また個体群レベルとして,これからの季節,海岸に大量発生する体長1 mm程度の赤いダニについても話題を提供したい.このダニはビルの屋上に発生するものは,化粧品工場,病院などで駆除の難しい苦情対象として問題とされている.東京大学三崎臨海実験所から提供を受けた標本を含めて,日本とヨーロッパ170地点をこえるサイトから海岸,河原,コンクリート上の「赤いダニ」を採集し,その遺伝子配列を解析したところ,日本国内にはヨーロッパのカベアナタカラダニBalaustium murorum (Hermann, 1804) 個体と同一のハプロタイプを含む集団が広域に分布していた.また国内のアナタカラダニ属のダニ(Balaustium spp.)には,全部で7系統の隠蔽種が確認された.芝(2001)によるカベアナタカラダニ種群,ハマベアナタカラダニ種群のうち,三崎臨海実験所の個体群は,国内で唯一,カベアナタカラダニ種群の隠蔽種であり,他のものはハマベアナタカラダニ種群の隠蔽種であった.付け加えて,MIGseq法を用いた,日本とヨーロッパの様々な地域の個体群の遺伝構造解析の研究成果もご紹介したい.