プレスリリース:体が分岐するゴカイの新種発見

当実験所の三浦徹教授、幸塚久典技術専門職員、中村真悠子さん(博士課程二年)、ドイツ・ゲッティンゲン大学のAguado教授らを中心とする国際研究チームの研究成果が、東京大学からプレスリリースされました。

 

—————

左右相称動物は、1つの頭尾軸に対して左右相称の体制を有しており、通常の発生過程で頭尾軸が分岐することは非常に稀である。しかし、環形動物のシリス科には、体軸が分岐するものが知られていた。最も顕著なのがカラクサシリスSyllis ramosaで、19世紀終盤頃にアジアの海域から報告があり、三崎においても深海性カイメンの内部から報告されている。また、近年になって、オーストラリア北部のダーウィンに近い浅海域から、体軸が分岐するシリスであるRamisyllis multicaudataが報告された。この種は宿主のカイメンの種や生息域、形態などがカラクサシリスとは異なり、複数の尾部から遊泳繁殖個体(ストロン)が遊離して繁殖を行うなどの特異な生態を示す。体軸が分岐するシリスは以上の2種のみが報告されていたが、今回日本海の佐渡島周辺の浅海からRamisyllis属の新種が発見された。

2019年10月に東京大・三崎臨海実験所、新潟大・佐渡臨海実験所、ゲッティンゲン大学、マドリード自治大学などの研究者からなるチームが佐渡島南部の宿根木で潜水調査を行い、環形動物が内部に棲息しているカイメンを採集した。採集された個体について、生時の観察、組織学的観察、免疫染色を行い、更にDNAを抽出し、いくつかの遺伝子配列を決定し分子系統解析を行うとともに、ミトコンドリアの全ゲノム配列も決定した。その結果、佐渡島由来の本種は、オーストラリア産のR. multicaudataと近縁であるが、別種であることが強く示唆されたためR. kingghidoraiとして新種記載した(図)。本種の尾部に開口した肛門に繋がる消化管内には多数の繊毛が生えており、尾部からの海水の流入を促すことが示唆された。本種の著しく分岐する体制は、多数の尾部から繁殖個体を放出できるという繁殖上のメリットがあるとともに、尾部から海水を取り込むことで栄養吸収効率を上げる役割がある可能性も示された。

キングギドラシリス*.jpg
図:新種記載されたキングギドラシリス(Ramisyllis kingghidorahi)の特徴的な体制。頭部は単一で、尾部に行くに従い分岐する。
—————
 

詳しくは下記のリンクをご覧ください。

論文へのリンク

https://www.tandfonline.com/dhttps://link.springer.com/article/10.1007/s13127-021-00538-4

 

プレスリリース

<理学部ウェブ>

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2022/7691/

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/

<東京大学ウェブ>

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/