下記の通り、第284回 三崎談話会を開催いたします。参加申込・お問い合わせは、三浦(miu_at_mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)または小口(世話人 k.ohgreen226_at_gmail.com)まで。
日時:2018年3月19日(月)17時00分〜
場所:東京大学大学院理学系研究科・附属臨海実験所・会議室
講演者:荻野哲也(京都大学)
懇親会: 18時半〜
海産環形動物の一群である多毛類は、非常に多様な海底環境に適応することができた分類群であり、その範囲は潮間帯から深海まで、およそすべての海底に及ぶ。生物が生息範囲を拡大するときに重要となるのは、新たに進出する環境の物理・化学的要因が好適かどうかを正確に把握することである。そこで演者が注目しているのが、様々な物理・化学的刺激の感知を担うことが知られているTransient receptor potential channel (TRPチャネル)である。TRPチャネルは酵母からヒトに至るまで、真核生物に広く保存されているセンサー分子であり、主に恒常性を保つため、体内外の環境変化を感知し、行動・生理学的応答を制御している。本発表では、多毛類の中でもより特殊な環境に適応できた2種を取り上げて、TRPチャネルが環境適応に果たした意義を紹介する。まず、非常に過酷な物理・化学的環境である深海熱水噴出孔環境に適応できたマリアナイトエラゴカイ(Paralvinella hessleri)の化学刺激感知機構について紹介した後、有機物の非常に多い湾内底泥を好んで生息するイトゴカイ(Capitella teleta)の貧酸素感知機構について、主に薬理学的手法で見えてきた結果について紹介する。