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第 298 回 三崎談話会

下記の通り、第298回 三崎談話会を開催いたします。今回は、両生類の生物学について、ゲノミクス・インフォマティクスを駆使して先駆けた研究を行っている松波雅俊さん(琉球大)・福井彰雅さん(中央大)をお招きしてご講演頂きます。ご興味のあるかたは是非ご参加下さい。談話会・懇親会の申込は、三浦(miu_at_mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)または宇田川(世話人 udagawa_at_mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)まで。

日時:2019年10月31日(木)16時00分~

場所:東京大学大学院理学系研究科・附属臨海実験所・セミナー室

講演者:松波雅俊(琉球大学大学院医学研究科)・福井彰雅(中央大学理工学部

懇親会: 18時30分〜 場所未定 

松波雅俊(琉球大学大学院医学研究科・先進ゲノム検査医学講座・助教)
「両生類における表現型可塑性の分子基盤」

 同一のゲノム情報をもつにも関わらず、環境の変化に応じて形質が変化する現象は表現型可塑性と呼ばれる。両生類は、脊椎動物の中でも特に多様な表現型可塑性を持つことが知られているが、その分子機構については未だに不明な点が多い。演者は、幼生期に顕著な表現型可塑性を示すことが知られている北海道原産のエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)を用いて、両生類における表現型可塑性の分子基盤の解明を目指して研究を進めてきた。脊椎動物の内分泌系の中枢である脳下垂体を用いたトランスクリプトーム解析により、PTH2, CALCA, PRL1, GH, NPBなどの内分泌関連因子の発現量が可塑性の発現と相関していることが明らかになった。また、分子系統解析の結果、PRL1とCALCAは、それぞれ両生類の祖先系統と有尾両生類の祖先系統で遺伝子重複を起こしている可能性が示唆された。本講演では、これらの結果について報告する。さらに、現在、新規モデル生物であるイベリアトゲイモリ(Pleurodeles waltl)を用いて、ゲノム編集によるこれらの内分泌関連因子の機能検証を進めてるので、その進捗についても紹介する。

福井彰雅(中央大学理工学部・生命科学科・教授)
「アフリカツメガエルはピカイアの夢を見るか? ー異質4倍体脊椎動物ゲノムの解析ー」

 アフリカツメガエル Xenopus laevis 世界で広く利用されているモデル生物である。これまでに動物生理学・発生学・細胞生物学・生化学などの様々な分野で重要な役割を果たしてきており,特に胚誘導や細胞分裂における貢献は大きい。そのサイズと複雑さから遅れていたゲノムプロジェクトも,日本で創出された近交系(J系統)を用いることで,ヒトやマウスと比較しても遜色のないアセンブリの構築が達成された。このゲノムの解析結果より,アフリカツメガエルはわずか1,800万年前に祖先種の交雑によって異質4倍体化が起きていたこと,2つのサブゲノムが明確に区別され,これらは独自の進化を経ていることが明らかとなった。果たしてこれが約5億年前に起きたとされる脊椎動物祖先種の全ゲノム重複を反映しているのか,たいへん興味がもたれる。このようなゲノム構造の解説と共に,ユニークなクラスター遺伝子の例もあげ,ツメガエルゲノムの進化について紹介したい。