公開臨海実習
学部学生を対象に、年2回(8月、3月)の公開実習を開催しております。
東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所(通称:三崎臨海実験所)は神奈川県三浦半島の西南端に位置し、半島の東側は東京湾、西側は相模湾に面しています。
世界的にも稀な豊かな生物相を有するこの地を動物学研究の拠点とするため、東京大学三崎臨海実験所は1886年(明治19年)に現在の三崎の町にわが国最初の、世界でも最も歴史の古い臨海実験所の一つとして設立されました。1897年(明治30年)に、より生物相の豊かな油壺に移転して現在に至っており、2016年には創立130周年を迎えました。設立以来、多数の国内外の研究者・学生に利用され、その数は年間延べ2万5千人にもなります。
わが国における生物学の発展に大いに貢献をしており、世界的にも、ウッズホール(米)・ナポリ(伊)・プリマス(英)の各実験所と共に海産動物研究の歴史に大きな足跡を残しています。
三崎臨海実験所での主だった活動を紹介致します。イベントの具体的なスケジュールは、下記の「トピックス」をご覧ください。
研究室への参加を希望される方は、上記「研究活動」から各研究室のページをご覧ください。
学部学生を対象に、年2回(8月、3月)の公開実習を開催しております。
不定期に、主に三崎を利用する外部研究者を講師とした公開セミナーを実施しております。
年に数回、自然観察会や展示室の一般公開を実施しております。
三崎臨海実験所からのお知らせです。
当実験所では現在、准教授1名を公募しています (2024年12月31日締切)。
詳細は以下の東京大学 大学院理学系研究科・理学部のページをご参照ください。
URL:https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/recruit/?id=1721
2025年11月1 5日
東京大学三崎臨海実験所利用者各位
東京大学 大学院理学系研究科 附属臨海実験所
所長 三浦 徹
東京大学 大学院理学系研究科 附属臨海実験所2025年度 教育関係共同利用公募のお知らせ
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、来年度の当実験所を利用した実習の公募要項をお送りいたします。
来年度の当実験所の利用をご希望の学校・団体におかれましては、要領を熟読の上、応募書類を期間内にご提出くださりますようお願い申し上げます。
2020年度から共同利用の場所が教育棟となっており,利用法並びに料金が改定されております。また、宿泊棟も改修工事を行いこれまでと仕様が異なっているため、注意事項等も変更となっており、感染症対策等についても注意事項がございますのでご留意ください。来年度のご利用のご検討とご計画のほど、心よりお願い申し上げます。
それではどうぞよろしくお願いいたします。
敬具
東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所では、教育関係共同利用拠点として生命科学、海洋生物学、生態学、地球惑星科学等、海洋関連分野の教育進展および人材の育成に寄与することを目的とし、全国および海外の大学、およびその所属学生に対して、当所を利用した統合的・学際的な教育カリキュラムを実施・受講する機会を提供しています。
今回、当所を利用して2025年度 (2025年4月~2026年3月)に行う実習等の教育関係共同利用の公募を行います。
公募要領は以下の通りです。
全国の大学の研究者(研究室・学科・学部)を対象として、当所の施設を利用した各種実習(セミナー・巡検等を含む)の実施を募集します。各大学(学部・学科・研究室)のニーズを踏まえて、当所の設備等の資源を有効に利用して実習を実施するための便宜を図ります。
理学系研究科附属臨海実験所に滞在して、各自の研究課題(卒業研究や修士論文・博士論文等)を実施する全国の学部学生および大学院生の利用を募集します。滞在する学生の施設利用および指導に関しては、各大学における指導教員と臨海実験所の担当教員が密接に連絡を取り合い、学生の課題の遂行に必要なアドバイスを適宜行うと共に、野外調査や生物の採集・飼育についての支援を行います。
上記の区分A,Bをふまえて受入の余裕がある場合、全国の高等学校・中学校の教員を対象として、当所の施設を利用した各種実習(SSH, SPP等)の実施の受入をいたします。
ご利用をご希望の方は、「利用の手引き」をよくお読みの上、下記の書類をe-mailもしくは書面にて下記提出先まで御提出下さい。
(1) 教育関係共同利用申請書(様式3、 電子ファイル)
(2) (区分A, C)実習利用団体 実習予定表(書式自由)
(区分B)指導教員による推薦書(書式自由)
※様式は当実験所webサイトよりダウンロード下さい。
https://www.mmbs.s.u-tokyo.ac.jp/wp/?page_id=598
東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所 事務室
〒238-0225 神奈川県三浦市三崎町小網代1024
tel: 046-881-4105
e-mail: office@mmbs.s.u-tokyo.ac.jp
(件名を「25実習教育公募利用申請」として下さい)
利用採否・利用期間等は、当臨海実験所運営委員会で審査し、区分A・区分Bは1月初旬までに、区分Cは1月下旬までに所長名で通知いたします。
共同利用実習、共同利用研究教育に採択された方は、その年度の末日までに所定の報告書を当所宛に提出して下さい。報告された内容は、当所の年報に掲載する予定です。(シラバス等あれば、そちらも提出お願いします。)
第307回の「三崎談話会」の開催が決まりましたのでご連絡いたします。
今回は4名の演者の方をお招きし、対面とオンラインのハイブリッドでの開催を予定しております。参加をご希望の方は、下記のGoogleフォームでご回答下さい。zoom URL等の情報が返信されます。皆様のご参加をお待ちしております。
日時:2024年10月10日(木) 16:30〜18:30
*時間は目安です
場所:東京大学三崎臨海実験所 教育棟講義室/zoomのハイブリッド開催
懇親会:19:00〜(所内で開催予定)
参加申込:https://forms.gle/S3mDvbud9HuvSCRW8 【回答締切:前日(10/9)17:00】
岡西 政典(広島修道大学人間環境学部・准教授)
「広島修道大学の生物系研究とこれからの理系教育について」
*16:30–16:45
広島修道大学は、広島県広島市の北西部に位置する、いわゆる地方私立大学である。大学としての歴史は商科大学に端を発しており、現在は7学部13学科4研究科を擁する文系大学である。その中にあって、演者の所属する人間環境学部は、理系教員が含まれる「文理融合型」の学部である。20名の教員のうち、農学・理学の学位を持つ生物系の教員が4名所属しており、それぞれに野生動物、水生昆虫、海産無脊椎動物を対象とした研究を展開している。また、広島修道大学では、近い将来に農学部の開設が検討されている。その中では、中四国における生物学教育を実践すべく、生物科学科を設立することも検討されている。本講演では、そのような広島修道大学における生物学の研究者や各自の取り組みをご紹介すると共に、農学部の開設に伴う今後の理系教育についても話題を提供し、ざっくばらんな議論につなげたい。
長谷川 尚弘(広島修道大学人間環境学部・助教)
「マボヤ目(尾索動物亜門・ホヤ綱)の進化過程における個虫縮小化過程の推定」
*16:45–17:20
ホヤ綱マボヤ目を対象にした系統解析と祖先形質復元により、群体性の進化過程において個虫縮小化に方向性があったことを示した。本研究では、日本とイスラエルで採集した17種のホヤ類からRNAを抽出し、トランスクリプトーム配列を決定した。このトランスクリプトーム配列に加えて、マボヤ目シロボヤ類16種のトランスクリプトーム配列をGitHubリポジトリから、またマメボヤ目とマボヤ目のホヤ類9種のプロテオーム配列をホヤ類公共データベースANISEEDから取得した。得られた全42種の配列情報をもとにオーソログの配列についてアラインメント、トリミングおよびコンカテネート処理を経て、1883遺伝子由来の1,039,648アミノ酸からなるデータセット(欠損率0.1%)を作成した。このデータセットに基づいて最尤法とベイズ推定を用いた系統解析を行った。得られた最尤系統樹をもとに、ベイズ推定を用いた祖先形質復元を行った。その結果、群体性の獲得後、個虫が漸次縮小していったという進化的傾向が示された。個虫小型化は群体性動物が付着するための基質上のスペースを巡る競争に対する適応的な反応であると考えられる。これを説明するために、個虫小型化は母個虫が出芽してから娘個虫が出芽し始めるまでの期間を短くし、群体が海中の基質上を拡大する速度を速めることを示唆する数理モデルを構築した。これに加えて、本研究の結果は群体性が褶鰓目の中で3回独立して進化したことを推定した。さらに、群体性に関連する形質が一度獲得されると、それらは一貫して保存されることも示唆した。このことは、群体性ホヤ類にとってこれらの形質が生物学的に重要であることを強調している。
鈴木 智也(広島修道大学人間環境学部・助教)
大庭 伸也(長崎大学人文社会科学域(教育学系)・准教授)
東城 幸治(信州大学 学術研究院 理学系・教授)
「親子判定から見えてきたコオイムシの繁殖戦略」
*17:20–17:55
昆虫における仔育て行動は様々な分類群で進化している。仔育てには「母育 maternal care」「両親育 biparental care」「父育 paternal care」の3つのパターンがあり、父親が単独で仔育てする父育はたいへん珍しい。コオイムシ科昆虫ではその全種が父育を行うことが知られており、その中でもコオイムシ亜科昆虫はオスが卵塊を背負って保護を行う特殊な父育行動を進化させた。本研究では、オスが背負っている卵は本当に自身の仔か検証するため、個体識別した20ペアを自由交配させ、独自に開発したコオイムシ用SSRマーカーを用いて親子判定を実施した。その結果、約35%の卵は他オスの精子によって受精したもので、コオイムシでは父性 (父親と仔の血縁関係) が低いことが明らかとなった。さらに、父育行動を全く行わずに (卵塊の保護をせずに) 自身の子孫を残している「やり逃げオス」まで検出された。この「やり逃げ」行動は「オスの托卵」と捉えることができる。このような「オスの托卵」行動は多様な昆虫類においても類を見ない行動である。本研究の結果は、これまでの父育行動進化の議論のパラダイムシフトにも繋がる重要な知見であると考えている。
奥田 圭(広島修道大学人間環境学部・教授)
「イノシシの分布拡大地における生態特性と管理」
*17:55–18:30
近年、日本ではイノシシの分布拡大が進行しており、それに伴い捕獲数も増加している。その一方で、野生動物管理を担う狩猟者は減少および高齢化の一途を辿っており、捕獲圧の強化を図る上での課題となっている。また、人間が移出し、放棄された環境下ではイノシシが爆発的に増加することが明らかになっており、今後、人口減少・超高齢社会を迎える日本では、これまで以上にイノシシ個体群の新規流入および個体数増加が生じることが推察される。しかしながら、このようなイノシシの新規流入が生じた分布拡大地では、本種の生態特性が解明されておらず、個体数管理を講じていく上での基礎情報が蓄積されていない。
そこで我々の研究グループでは、近年イノシシの新規流入が生じた福島県沿岸部の原発避難指示区域と愛媛県今治市の大三島において本種の基本的な繁殖特性(初回妊娠年齢、妊娠率、胎子数、繁殖時期)を調査し、従来からイノシシが分布していた地域(従来分布地域)と比較することで、イノシシの分布拡大地における繁殖特性を明らかにすることを目的に研究を行っている。
本発表では、イノシシの分布拡大地における生態特性と本種の個体数管理の課題について紹介する。
お問い合わせ:
三崎臨海実験所 博士課程 千代田 創真(世話人:schiyoda@g.ecc.u-tokyo.ac.jp)
三崎臨海実験所 教授 三浦 徹(miu@mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)