第 303回 三崎談話会

第303回の「三崎談話会」の開催が決まりましたのでご連絡いたします。今回は対面とオンラインのハイブリッドでの開催を予定しております。参加ご希望の方は、下記のGoogleフォームでご回答下さい。zoom URL等の情報が返信されます。皆様のご参加をお待ちしております。

【第303回 三崎談話会】

日時:2023年6月20日(14:00〜

場所:東京大学三崎臨海実験所 教育棟講義室(zoomでもセミナーの模様を配信致します。)

参加申込:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScW5tYO-sLW-6Xe_UyPIOfR3u48rip7mGvUwgepghsOfEMIMA/viewform?usp=sf_link

 

昆虫類における性決定遺伝子の機能進化史から分子外適応のロジックを探る

千頭 康彦 (静岡大学理学部/日本学術振興会特別研究員PD

 生物進化の一側面には、既存の形質の新機能化があります。例えば、鳥類の翼を構成する骨や皮は、他の陸上脊椎動物の前肢のものと相同であり、祖先においては飛翔ではなく、歩行や物を掴むなどの機能を果たしていたと推定できます。このような既存形質の新機能化は「外適応」という用語で呼ばれます。この 20 年ほど、外適応に関する研究は、形態形質とそれに関わる発生遺伝学的メカニズムを中心に行なわれてきました。一方、形態形質以外の形質に関わる分子メカニズムや遺伝子の外適応は必ずしもよく分かっているわけではありません。

 形態形質以外の形質の外適応を考えるうえで好適なモデルに、動物の性決定があります。動物の性は単一起源とされる一方で、性決定の分子メカニズムは近縁動物群間でさえ異なります。すなわち、動物の性決定は分類群特異的な分子メカニズムの宝庫です。形態形質以外の形質における外適応の理解を目指し、発表者は性特異的スプライシングで制御されるという特徴をもつ昆虫類の性決定メカニズムに注目し、その進化史を研究してきました。本発表では、昆虫類の性決定を担う幾つかの遺伝子について、昆虫進化の早くに出現したシミ目に属すマダラシミ Thermobia domestica での機能と他昆虫種との比較から推定される進化史を紹介し、性決定遺伝子の外適応について議論します。