プレスリリース:化石種を一挙に9種発見 クモヒトデが新たな環境指標生物となる可能性

当実験所の岡西政典特任助教、幸塚久典技術専門職員、群馬県太田市元教員金子稔さん、株式会社日本海洋生物研究所技術者三井翔太さんの研究成果が、東京大学からプレスリリースされました。以下、研究の概要です。

—————

肉眼での確認が難しいサイズの化石は微化石と呼ばれ、古環境を推定するための有用な材料として用いられる。代表的なものには有孔虫や貝形虫、珪藻などが知られている。

東京大学大学院理学系研究科の岡西政典特任助教らの研究グループは、神奈川県三浦半島にある横須賀層大津砂泥部層(約1~13万年前)という地層から、棘皮動物であるクモヒトデ類9種の腕の骨片化石を発見した。クモヒトデ類の体は数mmの炭酸カルシウムでできた骨片が組み合わさって構成されており、死後はそれらがバラバラに分離する。近年、三浦半島の別の地層である宮田層より、この骨片化石が岡西特任助教らによって発見されてきたが、単種の記載報告が2報知られるにとどまっていた。したがって、単一の地層における骨片化石に基づくクモヒトデ相の解明は、インド-西太平洋地域で初となる。

化石として発見された9種について、相模湾に現在分布しているクモヒトデ類の生息環境(水深)との比較による古環境推定を行った結果、大津砂泥部層の堆積環境が、水深80 m以深の大陸棚または陸棚斜面であったことが推測された。これは、先行研究による貝類化石を用いた古環境推定の結果とも概ね一致していた。今後、クモヒトデ類の骨片化石を用いた古環境の推定が進展すると期待される。

本研究で得られた9種の骨片化石(上段)と、それに最も近いと思われる現生種の全体写真(全長数cm~20 cm)と骨片写真。スケール(骨片)は1 mm

—————-

詳しくは下記のリンクをご覧ください。

論文へのリンク

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08912963.2021.2000975 

プレスリリース

<理学部ウェブ>

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2021/7646/

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/

<東京大学ウェブ>

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/

 

2022年度教育関係共同利用公募のお知らせ

来年度の当実験所を利用した実習の公募を開始いたします。

来年度、当実験所の利用をご希望の学校・団体におかれましては、要領を熟読の上、応募書類を期間内にご提出ください。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、利用人数の制限等、通常時に比べて様々なルールがございます。

ご利用時の感染状況等によって、利用の可否や制限等に変更の可能性があることをご了承いただきますようお願い申し上げます。

公募要領を熟読し、感染予防にもご留意くださいますよう、併せてお願い申し上げます。

三浦所長が日本動物学会学会賞を受賞されました

当実験所所長の三浦徹教授が、2021年9月に開催された日本動物学会第92回大会において、学会賞を受賞されました。

本賞は、学術上、有益で動物学の進歩発展に重要な貢献をなす業績を挙げた研究者に贈られます(学会HPより)。

動物学会賞・奨励賞

 

今回、三浦教授は、「昆虫類における表現型可塑性の分子発生基盤とその進化」というタイトルで受賞されました。

今年は緊急事態宣言下ということで、オンラインでの受賞となりましたが、その後、実験所で受賞記念の講演会を開いていただきました。

 

講演会の様子①

 

講演会の様子②

(感染対策を行った上で対面で行っています)

 

受賞の記念品を受け取ってもらいました

 

記念集合写真

(感染対策に配慮して撮影しました)

 

三浦所長のますますのご活躍を祈念しております。

研究室の扉:イカの吸盤形成過程の解明

2020年6月にプレスリリースされた、金原遼亮さん、中村真悠子さん、小口晃平さん(現:産総研)、幸塚久典さん、三浦教授の研究成果が、東京大学のyoutubeチャンネル(研究室の扉)に公開されました。

コウイカの吸盤形成に関する論文です。以下、プレスリリースの概要です。

—————-

自然界において他の動物とは異なる新たな特徴を獲得すること(新規形質の獲得)は環境に適応し生息域を広げるために非常に重要である。特にイカやタコ等の頭足類は軟体動物に属するが、墨袋など頭足類に特徴的な新規形質を数多く獲得してきた。中でも「吸盤」は、物の保持や餌の捕獲など複雑な行動を可能にし、頭足類の示す高度な知能の発達にも関わると考えられる重要な形質であるが、そもそも吸盤がどのように形成されるのかといったことすらほとんど未解明であった。

東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所の三浦徹教授と金原僚亮大学院生を中心とした研究グループは、頭足類の中でも扱いやすいコウイカ目に着目し、受精後の胚発生過程から孵化後数ヶ月にわたって吸盤形成過程の観察を続けた。共焦点レーザー顕微鏡や組織切片を用いた観察の結果、腕の最先端部に尾根状に隆起した領域が見られること、そこから未発達な吸盤が作られイカの成長に伴って吸着力を生むための構造が分化すること、孵化後には未発達な吸盤を保護するように腕の先端が皮で覆われるようになることなど、吸盤の詳細な形成パターンを明らかにした。

本研究により、今後頭足類が吸盤という独特の新規形質をどのようにして獲得したのかを解明していくために必要不可欠な知見が得られた。

—————-

詳しくは下記のリンクをご覧ください

論文ウェブサイト
https://frontiersinzoology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12983-020-00371-z

プレスリリース
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/6997/

Facebook

https://www.facebook.com/UTokyo.News

Twitter

2021年度公開臨海実習のお知らせ

2021年度公開臨海実習Aコース 参加者募集要項

実習演目 特別臨海実習 Aコース:海洋動物の多様性と系統学
担当教員 三浦  徹(東京大学・大学院理学系研究科・教授)
吉田  学(東京大学・大学院理学系研究科・准教授)
黒川 大輔(東京大学・大学院理学系研究科・助教)
岡西 政典(東京大学・大学院理学系研究科・特任助教)
実習内容 「海洋動物の多様性と系統学」
世界的に見て豊富な生物相を有する三崎臨海実験所周辺海域において実習を行う。磯採集した動物を実験室に持ち帰り、詳細に観察し、外観のスケッチを行い、文献等を参考にして同定する。また、採集・観察した動物の学術標本の作製・DNAの抽出を行い、分子マーカー配列に基づく分子系統樹を作成する。これらの実習によって多様な生物,特に後生動物のボディプランをほぼ全て網羅する海産動物に親しみを持つと同時に、それらの分類学・形態学・系統学・生態学の導入部分を勉強する。
実習にあたっては,生物の解説や、基本的な解析は、極力自分で持参したデバイス(ノートPCが望ましい)を通じて行う。
開講期間 2021年8月17日(火) から 8月21日(土)(4泊5日)
対象学生 学部1~3年次主体
定員 約10名
単位 1単位
(東大理学部以外の学生に対しては単位認定できませんが、代わりに受講証を発行します)
申込方法

登録及び連絡の際の間違い防止のため、以下の2段階での申込をお願いいたします。

1. まずメールでの予備登録をお願いいたします。
   メールのタイトルを「公開臨海実習参加希望」として、本文中に
          (1)氏名
          (2)所属(大学・学部・学科名)と学年
          (3)連絡可能な電子メールアドレス(出来るだけPCのものでお願いします) 
を記入の上、office@mmbs.s.u-tokyo.ac.jp までお送り下さい。
この際、可能ならば連絡先となっているアドレスから送信していただけますと助かります。

2. 以下の書類を作成の上、東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・公開臨海実習担当宛まで、郵送またはファックス(046-881-7944)でお送り下さい。
   ・ 公開臨海実習受講願
   ・学生教育研究災害障害保険等の加入を証明するもの (領収書・証書等)
    (大学で傷害保険に強制加入している場合は不要)

連絡先
東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・実習受付
〒238-0225 神奈川県三浦市三崎町小網代1024
Tel: 046-881-4105, Fax: 046-881-7944
e-mail: office@mmbs.s.u-tokyo.ac.jp
URL: http://www.mmbs.s.u-tokyo.ac.jp/
所要経費 15,000円程度(実習全期間の宿泊費・食費を含む)
申込締切 2021年7月9日(金)
注意事項
  • 参加希望学生は必ず ”学生教育研究災害傷害保険(もしくはこれに相当する保険)” に加入してください。
  • 2020年3月開講予定の特別臨海実習Bコースにつきましては、2020年1月頃に別途通知いたします。
  • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策のため、実習の実施に際して参加者にはいろいろとお願いや活動の制約がかかること、また蔓延状況によっては直前であっても実習を中止する可能性があることを、予めご承知おき願います。
  • 不明な点、質問等がございましたらメールにて、三崎臨海実験所・事務室(担当:小森)(e-mail: office@mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)までお問い合せ下さい。

2021年度教育関係共同利用公募のお知らせ

来年度の当実験所を利用した実習の公募を開始いたします。

来年度の当実験所の利用をご希望の学校・団体におかれましては、要領を熟読の上、応募書類を期間内にご提出ください。

本年から共同利用の場所が教育棟に変更になっているため,利用法並びに料金が改定されております。

また2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で利用制限がございましたが、現在も引き続き感染状況は好ましくない状態が続いているため、利用人数の制限等、通常時に比べて様々なルールがございます。

公募要領を熟読し、感染予防にもご留意ください。

プレスリリース:群体動物コケムシにおける異形個虫「鳥頭体」の発生過程

当実験所の山口遥さん、中村真悠子さん、宇田川澄生さん、進士淳平さん、幸塚久典さん、三浦教授、2020年3月まで三崎臨海実験所に在籍された小口晃平さん(現:産総研)、北里大学の広瀬雅人さんの研究成果が、東京大学からプレスリリースされました。以下、研究の概要です。

—————-

同種の個体から成る動物集団において、形態や行動の異なる個体間での分業は、社会性昆虫におけるカースト分化などがよく知られる。海洋環境でよく見られる群体動物では、同一群体内で分業が生じていることが知られるが、形態の異なる個虫(異形個虫 )がどのような発生過程を経て生じているのかについては未知であった。特に、代表的な海産群体動物として知られるコケムシでは、様々な異形個虫が見られるため非常に興味深い。

東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所の三浦徹教授と山口悠大学院生を中心とした研究グループは、採集および観察が容易な種であるナギサコケムシを用いて、防衛個虫として知られる「鳥頭体」の発生過程を、走査型電子顕微鏡や組織切片を用いて経時的に観察を行い、3つの大きな出芽により鳥頭体が形成されることを明らかにした。まず常個虫の先端部から鳥頭体の基部peduncle cushionとなる細胞塊が出芽し、その基部から頭部(鳥頭体本体)を形成する原基が出芽する。さらに、頭部の内部では虫体となる組織が出芽する。

本研究により、コケムシ動物の異形個虫分化の発生機構を解明する基盤が構築されたため、将来的には群体動物における分業システムの進化過程の理解に繋がることが期待される。

—————-

詳しくは下記のリンクをご覧ください。

 

論文へのリンク

https://bioone.org/journals/zoological-science/volume-38/issue-3/zs200143/Developmental-Process-of-a-Heterozooid–Avicularium-Formation-in-a/10.2108/zs200143.full

 

プレスリリース

<理学部ウェブ>

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2021/7214/

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2021/

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/

 

<東大本部ウェブ>

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/index.html

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2021/7214/

公開臨海実習(春開催)中止のお知らせ

当実験所の春の公開臨海実習では,例年外国から協力教員を招聘しております。
内外のCOVID-19の感染状況を見るに,協力教員の招聘,他大学からの学生参加,いずれの実施も困難であると判断せざるを得ない状況です。従いまして残念ながら今年度は実習自体を実施をしないこととなりました。
大変申し訳ございませんが,何とぞ御了解のほどよろしくお願いいたします。

プレスリリース:パナマから記載された新種のヒモムシ

三浦研博士課程1年の波々伯部夏美さんが新種記載したパナマ産ヒモムシの記事が、アメリカのスミソニアン熱帯研究所のウェブサイトで紹介されました。

本種は波々伯部さんのパナマでの生物採集に助力したパナマの生物学者であるMaycol Madridさんに因み、Euborlasia maycoliと命名されました。

 

詳しくは下記のリンクをご覧ください。

 

 
スミソニアン熱帯研究所の記事:

https://stri.si.edu/story/panamanian-ribbon-worm

研究室の扉:シロアリの生殖虫分化機構

2020年6月にプレスリリースされた、小口晃平さん(現:産総研)と三浦教授の研究成果が、東京大学のyoutube チャンネル(研究室の扉)に公開されました。

シロアリの繁殖制御に関する論文で、東京大学、関西学院大学、慶應大学のチームによる研究成果です。以下、プレスリリースの概要です。

—————-

真社会性昆虫は、一部の個体のみが繁殖を担い、他個体は不妊の労働カースト(ワーカー)として働く繁殖分業を最大の特徴とする。シロアリでは、雌雄の生殖虫(女王と王)がコロニー内に共存し、他個体のカースト分化に影響を与えることで、適切な生殖虫の数や比率を維持していると考えられてきたが、雌雄の生殖虫と他個体との関わりによるカースト分化決定機構の詳細は未知であった。

東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所の三浦徹教授を中心とした研究グループは、シロアリの巣内で生殖虫が失われたときに、本来は労働のみに従事するワーカーが繁殖個体へと脱皮する「補充生殖虫分化」(以下、「生殖虫分化」と表記)に着目した。この分化過程では、生殖虫の存在に応じてワーカーの生理状態が変化し、生殖虫へと分化する仕組みの存在が予想されてきた。シロアリでは、体内の幼若ホルモン(juvenile hormone: JH)(注1)の濃度変動がカースト分化運命を決定することが知られるが、生殖虫分化におけるJHの機能については未知であった。そこで本研究では、オオシロアリHodotermopsis sjostedtiを用い、雌雄の生殖虫と同居させたワーカーの生理状態がどのように変化し、カースト分化運命を決めるのか実験・分析を行なった。

飼育実験の結果、オス生殖虫によるメス生殖虫分化の促進効果は、その逆(メス生殖虫によるオス生殖虫分化)よりも明らかに強く効いており、脱皮までの期間が短縮されることで、速やかなメス生殖虫分化が実現されていることが明らかとなった。そしてこの促進効果は、オス生殖虫がメスワーカーの体内JH濃度を低下させることで実現させていることを明らかにした。このことは、メス生殖虫分化が誘導されるはずのオス生殖虫の存在下のワーカーにJH類似体(注2)を投与した結果、ワーカーの脱皮期間が延び、生殖虫分化が阻害されたことからも支持された。このように、シロアリの生殖虫分化の裏には、オス生殖虫がメスワーカーのJH濃度を操作することでメス生殖虫分化を促進する機構が存在し、その結果メスに偏った生殖虫の性比が実現していることが強く示唆された。

—————-

詳しくは下記のリンクをご覧ください

論文サイト
https://www.nature.com/articles/s41598-020-66403-0

プレスリリース
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2020/6903/